Vol.2 小沢一敬 × カツセマサヒコ

「THE BLUE HEARTS」と「フリッパーズ・ギター」と「ダウンタウン」が一緒な理由、言っていい?

インタビュー・テキスト:カツセマサヒコ 撮影:豊島望編集:矢島由佳子
小沢

もちろん、音楽にもすごく影響を受けてる。

カツセ

歌詞の世界観だと、どなたに影響を受けていますか?

小沢

それはやっぱり、マーシー。真島昌利さん。

カツセ

やっぱりブルーハーツ。それも、マーシーさんなんですね。

小沢

うん。一択。

カツセ

マーシーさんはソロアルバムも出しているんですよね。小沢さんの過去のインタビュー記事を読んで、『夏のぬけがら』(1stソロアルバム、1989年11月リリース)を聴いてみたんです。“夏が来て僕等”の歌詞に<木に登り僕等 何回目の夏か数えた>ってあって。そこがめちゃくちゃ好きでした。

小沢

うんうん。

カツセ

若い人のなかには、ブルーハーツといえば“リンダリンダ”のイメージしかない人も多いと思うんですけど、「パッションで歌詞を書いている人たち」みたいな印象が実は違っていて、詩的なことを言うし、文学的なことを書くんだなって。

小沢

マーシーはね、すごく読書家なの。それこそマーシーに憧れてたから、マーシーが好きだったもの全部知らなきゃと思って、映画も本も全部掘った。「ビートニク」という文学のジャンルがあるんだけど、そこからアレン・ギンズバーグとかをよく読むようになって。マーシーは本当に、師なのね。天才だと思う。

カツセ

レベル感が全然違うかもしれないですけど、ミスチルに“花 -Mémento-Mori-”という曲があって、そのサブタイトルが藤原新也さんの同名の写真集からつけられたものだと知って、食い入るように読んだことがありました。

小沢

あれって探求心とかじゃなくて、マーシーが好きだから知りたいだけなんだよね。俺、政治とか税金のルール、何もしらないの。知らないことは多くて、たまたまマーシーのことだけを知っている。

カツセ

小沢さんの音楽プレイヤーには10,000曲くらい入っていると聞いたことがあります。普段、どうやって音楽を聴いていますか?

小沢

iPodクラシックには24,000曲くらい入っていて、でもそれ以上入れられないから、iPhoneに10,000曲くらい入れてる。あとは家にCDとかレコードが3,000枚くらいあるかな。

カツセ

すごい量……。どうやって音楽と出会っているんですか?

小沢

リチャード・バックの『イリュージョン』(1981年刊行)という小説があるんだけど、そのなかに1個、好きな言葉があって。概要だけ言うと、「あなたがそのとき目に入ったものに、あなたの今の答えがあるんだ」っていう。本屋に行ってこの本に出会ったっていうのは、あなたに今必要な本に出会ったということだって。だから俺は、レコード屋や本屋に行くようにしてる。

カツセ

偶然の出会い、いいですよねえ。

小沢

それこそThe Toy Dollsを知ったのもレコード屋で、めちゃくちゃいかれたジャケットだなと思って買ったら、めちゃくちゃかっこいいんだよ。出会いというか、縁なんだよね。情報を集めようというよりは、自分で足を運んで、出会い待ちしてる。

カツセ

サブスクは使いますか? Apple MusicとかSpotifyとか……。

小沢

あー、Apple Musicは使ってる。でも、クロマニヨンズが入ってないのよ。CDとかレコードを大事にしているミュージシャンはまだ参加していない印象だよね。オザケン(小沢健二)さんも入ってないし。

カツセ

確かに。ミスチルも25周年のタイミングでサブスク解禁しましたけど、『重力と呼吸』はまだ入っていないです。

小沢

オザケンさんがいいこと言っていたんだけど、「サブスクリプションは、音楽好きにとっては、言ってみれば辞書みたいなものだから」って。調べたいと思ったらすぐに聴けるって、すごいことじゃん。すごく勉強になる。それで好きになったらレコード屋に行って、レコードを買えばいい。本当に辞書みたいなものだから。あの人はやっぱりすごい、天才。

カツセ

オザケンさんつながりでいうと、小沢さんはフリッパーズ・ギターを友人から教えてもらって好きになったという話も聞いたことがあります。ブルーハーツとフリッパーズ・ギターって、真逆じゃないかな? って驚いたんですけど。

小沢

ブルーハーツとフリッパーズ・ギター、一緒だよ。

カツセ

でも、ジャンルとしては真逆に置きたくなるんじゃ……。

小沢

じゃあ「ブルーハーツ」と「フリッパーズ・ギター」と「ダウンタウン」が一緒な理由、言っていい?

カツセ

お願いします。

小沢

「あぁ、これ、俺やりたい」と思ったこと。

カツセ

ああー、なるほど!

小沢

The Clashのボーカルのジョー・ストラマ―は、(甲本)ヒロトの憧れだったんだよね。ヒロトは「ジョーのようになりたいと思いました。ジョーのようになる。それは、彼の音楽やファッションを真似ることじゃなく、誰の真似もしないことでした」って言ったの。

カツセ

わあ、なるほど。ジョー・ストラマー自体が、誰の真似もしなかったから、ですね?

小沢

そう。ダウンタウンになりたくてダウンタウンの真似をしたコンビは皆もういないの。「ブルーハーツ・フォロワー」みたいな言葉があって、ブルーハーツっぽいバンドも生まれたけど、全部もういないじゃん。そういう意味では、ブルーハーツとフリッパーズ・ギターとダウンタウンは一緒。誰かの真似ではなかったもん。

カツセ

ミスチルは、いろんなアーティストのエッセンスを取り入れて成長していった印象があっても、誰かのフォロワーになっている印象は確かにないかもしれないです。逆に、「Mr.Children・フォロワー」なら結構いる気がしていて、そこに誰があてはまるか分からないですけど、その人たちがミスチルを超えているのかっていうと、やっぱり同じことを真似しているだけじゃ越えられないんだろうなって気がしますね……。