Vol.2 小沢一敬 × カツセマサヒコ

何もかもが変わったのはTHE BLUE HEARTSの1枚目のアルバムからですね。

「あなたの人生を支え、彩ってくれた音楽(=Your Song)は、何ですか?」と聞いてみたい著名人に、お笑いコンビ・スピードワゴンの小沢一敬さんがいる。

小沢さんといえば、THE BLUE HEARTS(以下、ブルーハーツ)だ。これまでいくつものメディアで、小沢さんはブルーハーツにかける想いを熱弁してきた。おこがましくも、その光景を見るたび、僕にとってのMr.Children(以下、ミスチル)は、小沢さんにとってのブルーハーツのようなものなんじゃないかと思って生きてきた。小沢さん自身への憧れも重なったのかもしれない。

ブルーハーツは、スピードワゴンのネタのように「甘い」音楽を奏でないと思う。ミスチルのようにある種の女々しさのようなものを歌うわけでもないし、むしろ、それらとは真逆の存在のようにも感じる。

でも、だからこそこの企画で、小沢さんに改めて音楽について話を聞いてみたいと思った。小沢さんが語る音楽とブルーハーツには、きっと、スピリチュアルな話にまで至る何かがある気がする。

1973年生まれ。年齢的にもMr.Childrenのメンバーとほぼ同世代である。広く第一線で活躍し、愛され続けるお笑いコンビとなったスピードワゴンの小沢一敬さんに、音楽と人生を尋ねた。

インタビュー・テキスト:カツセマサヒコ撮影:豊島望編集:矢島由佳子
カツセ

ミスチルの新アルバム『重力と呼吸』のリード曲“Your Song”にちなんで、小沢さんの人生を支え、彩ってきた音楽について話を伺ってみたいです。よろしくお願いします!

小沢

はい、よろしくお願いします! 何曲も挙げていいの?

カツセ

まず、小沢さんにとって「人生の1曲」というのはありますか?

小沢

ブルーハーツの“未来は僕等の手の中”になっちゃうよねえ。

カツセ

ですよね。これ、いろんなところで聞かれていますもんね。

小沢

うん。最初のアルバム(『THE BLUE HEARTS』、1987年5月リリース)の1曲目だから。間違いなくこれになっちゃう。

カツセ

衝撃的だった、と話されているのを見たことがあります。

小沢

本当に、「うわぁー!!」って叫んじゃったの。びっくりしちゃって。「やばいやばい!」ってなって。まくらに顔をあてて、「あー!!」って叫んでた。何回も巻き戻して聴いて。本当にあれが、すべての始まりだから。

カツセ

僕がミスチルの1stアルバムの1曲目(『EVERYTHING』収録、“ロード・アイ・ミス・ユー”)から聴いても、そこまでには至らなかったと思いますし、ブルーハーツの音楽って、よほど衝撃的だったんでしょうね……。

小沢

この仕事をやっていると「どの曲が一番好きですか?」ってよく聞かれるんだけど、一番好きな曲は日によって変わっても、特別な曲は絶対に“未来は僕等の手の中”だねえ。

カツセ

小沢さんは愛知県知多市のご出身ですよね。工業地帯の印象があるんですけど、ブルーハーツの音楽に出会うまで、どういった幼少期を過ごされていたんですか?

小沢

少年野球はやっていたけど、本がすごく好きで、ずっと本を読んでた。親がよくくれたし、土曜日になると知多市の市立図書館に行って、1週間分の本を借りてたの。その頃から漫画も好きだったけど、当時、漢字がすごく得意だったのは、本を読んでいたからだったね。

カツセ

すでに現在の小沢さんに通じるエピソードな気がしますね。初めて買われたCDは何でしたか?

小沢

初めて買ってもらったのは小学校のときだったんだけど、カセットテープで、アニメソングがいっぱい入ったやつ。誕生日か何かでもらったんだよね。

カツセ

ご両親から音楽の影響って受けました?

小沢

両親から影響を受けた自覚はないけど、母親はいつどんなときも、歌っているの。掃除しているときもずっと歌っていたなって覚えてる。あとは、お姉ちゃんがいるから、その影響で尾崎豊さんとかは聴いて好きだったけど、何もかもが変わったのはブルーハーツの1枚目のアルバムからですね。

カツセ

ご友人から借りたんですよね。

小沢

そうそう。それをきっかけに「バンドやろうぜ」って言って、楽器買ったりレコード買ったりして、始まった感じ。

カツセ

小沢さんは漫画好きとしても有名だと思うんですが、テレビやTwitterなどでの発言もそうですし、「甘い」のネタの言い回しもそうですけど、普通の人じゃ考えつかないような文学的な表現とか、キザな言葉をあえて使っていますよね。あれは漫画の影響なのか、それとも音楽の歌詞から影響を受けているのか、どちらだと思いますか?

小沢

子どもの頃、『コブラ』(作者は寺沢武一)という漫画があって。その作中のシーンから影響を強く受けています。

カツセ

『コブラ』ってあの、左手が銃とくっついてる主人公ですよね?

小沢

そう。漫画のなかで、コブラに夜中、女の子から電話がかかってきて。普通の男だったら「何かあった?」って聞くでしょ? でもコブラは第一声が「どうした、背中のファスナーがとまらない?」って第一声で言うの。「あ、こういうこと言える大人にならなきゃ」と思ったの。

カツセ

言い回しが完全に今の小沢ワールドじゃないですか!

小沢

そういうのが最初から好きだった。『コブラ』の会話の切り返し方って、相手を舐めてるというか、力が抜けているというか、余裕が感じられていいんだよね。

カツセ

芸風といったら大袈裟かもしれないですけど、小沢さんのルーツをたどったら、もしかしたら『コブラ』が原点かもしれないですね。