Vol.3 近藤春菜 × カツセマサヒコ

見本にできる人がいなかったから、オリジナリティが生まれたんだと思います

インタビュー・テキスト:カツセマサヒコ 撮影:豊島望
カツセ

春菜さんの芸能界入りは、吉本興業の養成所に入った2003年ですよね。

近藤

そうです。養成所の面接がちょうど二十歳の誕生日でした。それまではずっとグズグズしていたんです。お笑いをやりたいけど自信がないし、具体的に何をしたらいいかわからないから、とりあえず演劇っぽいことができそうな短大に通ったりしていて。「学生でいられるうちは学生でいよう」みたいな甘えの気持ちもあったんだと思います。

カツセ

迷わず門を叩いたわけじゃなかったんですね。

近藤

そうなんですよね。養成所に入ったらネタの作り方とか学べるはずだし、相方も見つかるかなと思って、結局飛び込んだのが二十歳でした。「養成所で埋もれているくらいだったら売れないだろうな」って覚悟も、その頃にはできていたと思います。

カツセ

相方探しも考えていたということは、当時は一人だったんですか?

近藤

コンビで養成所に入る子もいるし、私も過去には別の相方がいたんですけど、養成所に入ったときは一人でした。あと、面接のときに「なんでもいいから30秒アピールをしろ」ってお題が出たんですよ。

カツセ

おお、早速試される感じがしますね。

近藤

でも、一人だし、ネタも持っていないし。私、唇を動かすのが得意だったので、「唇を使ったパントマイムやります」って言って、遠隔から指で自分の唇を引っ張ると、唇が釣られて引っ張り上げられるっていう一発芸やって、そしたら受かったんです(笑)。「吉本って本当に誰でも入れるんだな」って思いました(笑)。

カツセ

テキストで表現しようがないですけど、めちゃくちゃ面白いです、それ(笑)。

カツセ

今ではすっかり人気なお二人ですが、コンビを結成し、ブレイクするまでも順調だったんでしょうか?

近藤

もう、最初はつまずきっぱなしでした。今では皆さんの目もだいぶ慣れたと思うんですけど、はるか(箕輪はるか)とコンビを組んだ当初は、養成所内がザワついたんですよ。コンビって、昔はイケメンとブサイクが組むとか、そういうのが一番バランス良いとされていたので。

カツセ

なるほど。キャラクターにメリハリをつけるのが定石だったんですね。

近藤

そう。女子同士のコンビでも、かわいい子とブスな子が組むのが多かったんですけど、うちは何故か二人ともブサイク・ブサイクで組んだので、見た目にインパクトがありすぎでした。講師や同期がいる前でネタ見せるときも、順番並んでいるときから皆クスクスって笑ってるんです。

カツセ

強い。ステージに出る前から出オチしているんですね。

近藤

見た目がおもしろいから、喋り出しはウケるんですよ。でも、いざネタの中身ってなったときに、自分たちの見た目のインパクトを超えられなくて、尻すぼみになる。そういう時期が長かった気がします。

カツセ

恵まれたビジュアルがあったぶん、ネタのハードルも高かったんですね……。

近藤

例えば恋愛ネタをやっても、一人がボケる、もう一人がツッコむ。でもツッコむこっちも恋愛のことはとやかく言えないだろ、って空気が広がるんです。こういった悩みが尽きなくて。先輩を見ても、そのまま見本にできそうな人はあまりいなかった。森三中さんとか、尊敬する先輩ももちろんいらっしゃるけれど、トリオだし、やっぱりコンビでは難しかった。

カツセ

ロールモデルになる人がいなかった時期にもがいたからこそ、今、お二人にオリジナリティがあるんでしょうね。

近藤

そうですね。人とは違うからこそ、自分たちのことをすごく客観視して、「周りからはこう見られているから、こうイジらないと気持ち悪いよね」とか、「こうボケないとおもしろくないよ」とか、ずっと話していました。

カツセ

その努力の結果で、今のハリセンボンのお二人がいると思うんですけど、ブレイクされてから変わったことはありますか?

近藤

私たち、ブレイクらしいブレイクがあんまりなかったんです。一個下にオリエンタルラジオがいるんですけど、彼らの売れ方ってまさに大ブレイクだと思うんですよ。一年目でワーッと売れて、ゴールデンで冠番組を数本持つ、みたいな。でも、その横でぬるっと、なんとなくいるなーって感じでずっとやってきたのが、ハリセンボンだったんです。

カツセ

ハリセンボンさんに消耗されたイメージがないのは、大きなブレイクがなかったからこそかもしれませんね。

近藤

そうかもしれないです。だから、売れた実感もないんですよね。忙しくはなったけれど、変わったことといえば、私が実家をでて一人暮らしを始めたり、仕事をする先で地元の友達じゃなくて芸能の友達ができたりしたくらいで。あとは、酒を覚えるとか(笑)。はるかもほぼ変わらずで、今も実家に住んでいるし、彼氏ができた時期に若干腕毛を剃ったな……くらい(笑)。

カツセ

変化の大きさが乏しい(笑)。でも、本当にお忙しいはずですよね。

近藤

休みが取れず寝られていなかった時期もあって、蕁麻疹がバーッと出たことがあったんです。そのときに初めて「これって忙しいよね」って思いました。でも、吉本は上を見ると、めちゃくちゃ売れている人でも若手と一緒に何かしていたり、営業ですごく遠くに行ったりしているんです。そういう方たちを見ると、まだ頑張らなきゃいけないって思うんですよね。